

進学偏差の計算に必要なデータ

「進学偏差」とは、大学の偏差値から高校の偏差値を引くことにより、その高校における進学指導の効果を数値化したものです。
式としては『100+大学偏差値-高校偏差値』で表します。
この指標はあくまで統計的な参考値であり、個々の生徒の努力や様々な要因により、
実際の進学結果は大きく異なる可能性があります。
また、この数値の算出には以下の制約があることにご留意ください:
・大学の偏差値は学部により異なりますが、公表データの制限により平均値を使用しています
・進学先が不明な場合は一定の仮定のもとで計算しています
・単年度のデータに基づいているため、年度による変動があります
この記事では、進学偏差の計算方法、進学実績が不明な場合の問題点、データ不足時の補正方法について考えていきます。
ちょっと困っている。
どうしたの?
進学偏差を求めるためには、各高校の進学実績を調べる必要があるんだ。
そうだね。進学偏差を求めるためには、大学の偏差値とその大学に進学する人数が分からないとダメだからね。
例えばある高校の2023年度の進学偏差を求めるには以下のような計算を行う。
進学実績が掲載されていない問題

それで、何が問題なの?
前回紹介した高校は進学実績がきちんと書かれていたけれど、実際調べていくとほとんどの高校は合格実績しか掲載されていなくて、進学実績が分からないんだ。。。
えぇ!それじゃあ・・・。
進学偏差が出せない。
進学実績が不明な場合の対策

そっか。でも、合格実績はあるんでしょ? それを使って何か算出できないかな?
そうだな……少し事象を単純にして考えてみよう。以下は2つの高校の大学合格者を簡単な図で表したものだ。

70高校は偏差値が70とし、偏差値70の大学に2名、偏差値60の大学に1名、偏差値50の大学に1名合格しているとする。65高校は偏差値が65とし、偏差値60の大学に2名、偏差値50の大学に2名合格している。
偏差値の40の大学は?
高校にもよるが、掲載されていない場合がある。その場合は、一律45で計算する。これは浪人生の扱いと同じだ。
では、進学偏差を考えてみよう。70高校は進学者が偏差値70の大学1人のみ、だから式は以下のようになる。
計算すると83.3となる。これが70高校の進学偏差だ。
なるほど。65高校も同じように計算できる?
そうだね。同様に、65高校は偏差値が65として、計算してみよう。
計算すると88.75となる。
えっ、70高校よりも65高校の方が進学偏差が高い!?
進学偏差は元々浪人生に厳しくなるように設計しているから当然と言えば当然だ。
別に浪人が悪いというわけではないのだが、それが高校の実績かと言われると疑問なんだよな。
もちろん、浪人生もきちんとフォローされている高等学校もあると思いますが、個人的には予備校による所が大きくなる気がします。あくまで個人の意見ですが。。
ただ、これは進学実績の分かる場合。分からない場合はこういう図になる。先ほどの図と比較すると進学者が分からなくなっている。

う~ん、どこの大学に何人合格したかは分かるけど、実際にどこの大学に何人進学したかは分からなくなっているね。
そうなんだ。
ということで、別の視点で考えようと思う。
つまり?
高校の入学時の偏差値はそのままで、大学進学の偏差値平均を単純に大学合格の偏差値平均にする。
ただし、現役・浪人が分かれている場合は浪人は0.8の補正係数をかけ、分からない場合は全体に0.9の補正係数をかけるようにする。
浪人生が入っていると少し公平感にかけるからね。
そうだな。 ただ、これで計算すると進学偏差よりも高い数値になる。
進学偏差は母数が卒業生だから進学できなかった人も入るけど、この計算だと母数が合格者全体だから偏差値の高い大学のみ掲載すればよくなるもんね。
基本的には進学偏差と合格実績偏差は異なるものなので、比較するものではない。ただ、どうしても数字だけが一人歩きすることもあるからな。ということで、進学偏差は基準値が100だが、合格実績偏差は基準値を90と少し低くする。これで進学偏差より高くなることはあまりないと思う。
ん~?
実際にやってみよう。今、現役・浪人が分からない状態で考えるぞ。
70高校は70大学×2、60大学x1、50大学x1だ。40大学は記載がない想定なので無視する。このとき計算式は以下のようになる。
計算すると76.25だ。
65高校も同様に計算すると74.5となる。
あれ?70高校の方が高くなっちゃったね。
あぁ。ただ、65高校は本来浪人生がいないから0.9の係数をかける必要がない。65高校は現役生のみを公表していたと仮定する。
計算すると78.75だ。
逆転したね。
ついでに70高校も現役と浪人生を分けて公表していたと仮定すると以下のような計算式となる。
計算すると79となる。
おぉ、再逆転した。
うんうん、ケースによって異なるんだろうが、現役・浪人を分けた方が有利になっていい感じだ。
まとめ:進学偏差・合格実績偏差の活用と課題

進学偏差より基準値を下げたのもいいね。意外と数字だけで判断されちゃうから。
そうだな。信頼度は進学偏差の方が高いから、進学偏差の方が高い値になるべきだ。
これで進学実績のない高校でも比較ができそうだね。
そうだな。進学偏差は進学実績をベースにしているから、高校の教育力を表すにはよい指標だと思う。ただ、問題は合格実績しか掲載していない高校との比較ができないってことだ。
今回は合格実績をベースに考えているから、進学偏差ほどではないけど、幅広い高校の教育力が分かる死票になりそうだね!
そうだな。今年の受験生はもう試験が終わっている所も多いから参考にはならなかったと思うが、来年の受験生に向けてデータを収集していかないとな。
頑張ろうね!
進学偏差は、高校の進学指導の成果を数値化する有力な指標ですが、その計算には進学実績の詳細なデータが必要となります。しかし、多くの高校では合格実績しか公表されておらず、進学実績が不明な場合も少なくありません。そのため、補正係数を用いることで、可能な範囲で公平な比較を行う方法を考えました。
ただし、進学偏差はあくまで統計的な参考値であり、個々の生徒の努力や環境要因なども大きく影響する点には留意が必要です。今後、より正確なデータを収集し、指標としての信頼性を高めること目指していきます。